研究概要 |
研究開始の1年目はすでに完成している簡易型光音響顕微鏡を使って快削性セラミックスや高分子材料の表面および内部傷の評価を行った。低価格、低出力のHe-Neレ-ザ(15mW)を光源として使用したにもかかわらず光音響顕微鏡の実用化のためのいくつかの興味ある成果を得ることができた。以下順に説明する。 1,セラミックスのPA画像 表面に人工的につけられた100μm程度の直線傷を分解能よくメッシュ画像化することができた。またこれとは別に12階調表示法も開発し、顕微鏡の機能を向上させることができた。 2,高分子材料のPA画像 He-Neレ-ザ光に対して透明なエポキシ樹脂の裏面から直径1mmのドリル穴を表面下1mm程度の所まであけ、それのSPAM画像の検討を行い,以下の知見を得た。 1.平らな内部穴の場合,穴の縁だけが強調された平坦形PA画像になる2.丸い内部傷の場合,逆放物線PA画像となる。3.とんがり形内部傷の場合,PA画像は矩形型となる。 3,バッキング材の効果 透明な材料の場合、バッキング材の影響が著しいことが理論的に予想される。この影響を積極的に利用することを検討した。得られた結果は以下のとうりである。 バッキング材の種類としては金属より絶縁物の方が解像度を良くできる。また同一絶縁物でも白色より黒色の方がS/N比(S:穴の信号強度、N:背景信号強度)を40%程度改善できる。 4,内部情報の定量化計測 PA信号の発生メカニズムと穴の深さ計測法についての成果は以下のとうりである。 傷の無い部分でのPA信号は照射レ-ザ光の形状と同じ矩形であるのに対して、穴の部分では三角波に近い形となりレ-ザ照射時より数十(ms)遅れる。この時間的遅れは材料の性質を反映しているから、これを計測することで材料の物性定数や傷の3次元情報を計測できる可能性があり、現在実験を継続中である。 以上の成果を基礎として本補助金で購入した半導体レ-ザや顕微鏡部品を使って新しい機能を有する光音響顕微鏡の開発を行う予定である。
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