研究概要 |
光音響顕微鏡による透明試料の光音響像(SPAM像)の測定に対しては試料下のバッキング材が大変重要な役割を演じている。透明試料の内部傷について良いSPAM像を得るための試料とバッキング材の関係を明らかにできれば、開発したSPAM装置の材料評価能力をさらに高めることができると考えられる。本年度の研究目標は開発したSPAMを使って透明試料(エポキシ樹脂)の内部傷評価に適するバッキング材の検討と、傷検出がどの様なメカニズムで行われるか等を明らかにすることにある。 得られた研究成果は以下の通りである 1.バッキング材として表面を鏡面に磨いたアルミ(良導体)とアクリル樹脂(熱の不良導体)を準備し,各々の材料の1次元光音響信号の振幅と位相像を測定し,その結果がR-G理論と予盾しないことを確かめた。PA信号強度はアクリル樹脂の方がアルミよりはるかに強くなることを実験的に明らかにした。 2.アクリル樹脂の色を白と黒にし,各々の場合の1次元光音響信号の振幅と位相像を測定した。同一材料であるにもかかわらず黒くコーテングしたアクリルの方がはるかに大きなPA信号振幅となった。しかし位相像は両者ほとんど変化がなかった。 3.エポキシ樹脂をそれら3種類のバッキング材の上に直接接触させ,ドリル穴のある部分と無い部分の1次元光音響信号の振幅と位相像を測定した。その結果、黒いバッキング材を用いるとドリル穴を解像度よく計測できることが位相像から明らかになった。以上の実験事実を踏まえ透明試料のPA信号発生検出についての新しいモデルを提案することができた。なお,SPAMの半導体レーザ光源についても実験を行い、それをSPAM光源として使えることを確かめることができた。
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