高いフル-ド数での模型船の曳行実験を実施し、その実験手法および高速漁船の推進性能に関するいくつかの知見を得た。本年度は1.高速漁船模型船の制作。2.模型曳行方法検討のための実験。3.曳行装置の設計・制作。について研究を行った。以下、それぞれについて研究実績の概要を述べる。 1.高速漁船模型船の制作。北海道所属の2隻、茨城県所属の1隻の計3隻の漁船を母型として模型船を制作した。これらの漁船の航行時の船速はフル-ド数で0.7〜1.2と高速でありアルミ製の船体である。 2.模型曳行方法検討のための実験。模型の曳航方法の検討を主な目的として、3隻の模型船による高速曳航実験を実施した。実験は研究代表者の所属機関(北海道大学)および研究分担者の所属機関(水産工学研究所)の両者で実施した。高速航走時の船体の浮上およびトリム変化の変位をゆるすか、または拘束するかの2つの実験方法が考えられる。本年度はこの2つの実験方法(それぞれ自由曳行方法、拘束曳行方法と呼ぶ)による実験を実施し、これらの実験方法が船体推進性能に関する実験の結果に与える影響を調べた。 3.曳行装置の設計・制作。実験は50m曳行水槽において高フル-ド数で行うことを条件に、模型船の垂線間長さを0.7m前後の小型のものとした。この小型、小排水量の模型船を、装置の重量を模型に加重する事なく拘束する装置を制作した。この装置を用いた曳行実験は次年度に実施する予定である。 以上の実験より、実験方法および実験装置に関して次の知見を得た。 1)自由曳航方法において曳航ロッドの上下角を種々変えたが、これによって航走姿勢が変化しロッドの影響をうけるが、船体抵抗値におおきな変化はなくロッドの影響は見られなかった。 2)拘束曳航方法では任意の姿勢に於ける流体力の計測が可能であり、その流体力の意味は自由曳航方法と比較して明確である。 これら2つの方法による実験結果の関連を明かにする必要があるが、これは次年度の課題となった。
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