研究概要 |
この研究では,i)表面波を用いた計測システムの整備を行い,ii)計測上の基本事項を検討する.その成果を踏まえて,iii)表面波の音弾性定数(単位応力当りの表面波の伝播速度変化率)を求め,iv)平面内の(残留)応力分布状態を高精度で求める手法を開発することを意図した.以上のことについて,以下の知見を得た. 1)高精度時間測定系について:i)シングアラウンド測定装置を用いて,送受信子を固定した状態に対しては,0.03nsecの周期計測精度を持つ測定系を構成した(測定系A).ii)送受信子を固定した状態に対しては,その間の伝播時間を0.05nsec程度の精度で計測できるtime-of-flight計測系を構成した(測定系B). 2)送受信振動子について:表面波の送受信には,i)くさび型表面波振動子(試作:W型),およびii)線接触型振動子(試作:N型)を用いた.なお,測定系Aでは,i)のW型振動子およびii)のN型振動子2個を一対として用い,シングアラウンド周期を計測した(2W法および2N法).測定系Bでは、i)のW型振動子から発した弾性表面波をii)のN型振動子2個を用いて,その間を伝播するtime-of-flightを計測した(W2N法). 3)試験法と試験結果について:2N法およびW2N法により,アルミニウム合金(5052および2017)および鋼について,応力と表面波の伝播速度の変化率との関係(応力音弾性係数)を調べ,音弾性定数を決定した. a)アルミニウム合金(5052):-1.22×10^<-6>/(kgf/cm^2)(圧延方向),:-1.18×10^<-6>/(kgf/cm^2)垂直方向)b)アルミニウム合金(2017):-1.24×10^<-6>/(kgf/cm^2)(圧延方向),:-1.21×10^<-6>/(kgf/cm^2)(垂直方向)c)鋼(SS41):-0.209×10^<-6>/(kgf/cm^2)(圧延方向),:-0.233×10^<-6>/(kgf/cm^2)(垂直方向) 4)残留応力測定について:a)2W法によって,板ガラス平面上を送受信子を移動させたときの周期計測精度は,約0.6nsecであった(カップラーはシリコン・オイル).b)中央を直線状に溶接した平板サンプル(アルミニウム合金(5052))の残留応力測定を試みた.測定の可能性は示せたが,精度は不十分であった.
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