研究概要 |
1 目的:河川における土砂や汚染物質の輸送や拡散あるいは河岸・河床の洗掘の解明には,乱れの三次元的大規模構造の作用を把握することが重要である。従来の研究はほとんど実験室規模の小スケール,低レイノルズ数域で,統計的平均像に関して行われて来た。本研究は,乱れの実態解明のための計測機器・計測法の開発,疎らな点での計測データから乱れの瞬間的三次元構造の解析法の確立,実河川への適用を目的としている。 本年度は、最終年度になるので,これまでに得られたデータの解析,その図式表示(AVSシステムによる三次元的図化),解析ソフトの整備を心掛ける。また,本研究の流速場の三次元瞬間像の逆推定法を,土砂濃度場の三次元瞬間像の推定法に拡張することを試みる。 2 方法:(1)計測法の開発:電磁流速計の機能を拡張した二成分(x,z軸方向)四点同時計測可能な装置二台(一台は土木研究所)により,涸沼川で実測を行った。土砂濃度計により洪水時の土砂濃度の時空変化を計測する。 (2)三次元流速場・土砂濃度場の逆推定法:上記の試作電磁流速計による流れの横断面内の8点の同時連続流速時系列をTaylorの凍結乱流仮説により(x,y,z)場に変換し,これを仮想荷重法およびMASCON法により連続の方程式を満たすように修正する。さらに,この方法を土砂濃度の瞬間分布の推定に拡張する。 3 結果:(1)茨城県涸沼川において,1991年と1992年の二回にわたって行った洪水時のピーク流量時の現地観測を用い,三次元図化装置AVSシステムにより実スケール高レイノルズ数の洪水ピーク時の河川乱流の瞬間像として,流下方向の強い渦・ボイルと呼ばれる激しい上昇流の存在などを明らかにした。 (2)濁度の瞬間三次元分布の計測については,疎らな濃度計測点からの濃度場全体の逆推定の解析方法を提出し,シミュレーション・データにより,その妥当性について予備的検討を行った。
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