研究概要 |
本研究は,大規模な地下空間の特質を建築人間工学的視点から捉え,火災拡大・煙伝播に伴う人間の避難状況のシミュレーションによる地下空間の避難安全性を評価するシステムを開発するとともに,防災上の問題点を克服した大深度地下空間の成立の可能性を探り,その構成手法を提案することを目的としたものである。現在までに,地下空間における歩行者の行動軌跡,地下空間におけるサインの実態,調査結果に基づく地下空間の問題点の抽出の3点を実施し,基礎データの収集ならびに分析を終えた。地下街を通行する歩行者を追跡調査した結果,最短経路選択志向が非常に強く見られること,および通路幅や通路のつながり方が経路の選択行動にかなり影響することが明らかになった。また地下街のサイン計画を調査した結果,サインの設置主体によって扱う情報内容にかたよりがあり,全体としてサインシステムの整合性が不十分であること,大規模地下空間の全体像の把握が困難であるなどの問題点が明らかになった。これらの問題点は,地下空間の複層化・深層化が進むほど顕在化すると思われる。なお今年度後半から,地下空間からの安全性評価システムの開発に着手するため,大深度地下空間に関する既往の関連文献を収集・分析し,避難安全性からみた地下空間の問題点,ならびに地下空間のモデル化に必要な基礎データを整理したが,地下空間からの避難方法や安全域の配置方法が地上建物の場合と大きく異なるため,この点をモデルに組み込むことが次年度の課題である。
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