研究概要 |
1.昨年度の結果を踏まえて現場サブシステムの機能を強化し,92年夏のアル・トゥール遺跡発掘調査で試験運用した。各種図面を毎日出力することにより発掘作業の状況や遺跡の概要に関する研究者相互の共通認識が形成され易くなる,出力図を現場スケッチの下図として利用すると,観察や記録作業の密度や速度が向上する,等を確認した。 2.現場サブシステムで作成したデータを基に,遺構の要素別(部位・材質・施工時期別)3次元モデルを作成するシステムを開発した。このの要素別モデルを組合わせて,遺跡の再現モデルを構築した。さらに,要素別モデルを移動・削除しながら発掘の過程を再現し,また,遺跡の空間構造を解剖的に分析する機能を開発した。 3.遺構の表面模様を記録・再現するため,遺構の再現モデルに現場で撮影した写真を合成表示する機能を構築した。4通りの合成手法を比較し,作業手間から見て,面別リアル・マッピングと面別繰返し記号マッピングの併用が効果的なことが分かった。アル・トゥールの住居遺構の要素別モデルを用い,発掘過程の追跡,遺構と遺物の出土位置との相対位置関係や材質別遺構要素位置の分析などの,遺跡の空間構造を分析した。研究室サブシステムが,研究室で発掘過程を追体験し,解剖的に遺跡を分析する道具として,図面を超える性能を持つことを後確認した。 4.要素別モデル構築の際の参考資料とするため,発掘過程で撮影される大量の記録写真を管理する記録写真検索システムを開発した。画面を見ながら,遺跡における空間的位置関係や,発掘段階における時間的関係を手がかりに検索する機能を付けたところ,これ自体,発掘の過程を追体験する道具として活用できることが明らかになった。 5.モデル構築や,システムの操作の繁雑さの解消が,課題として残ったが,機能的には当初計画したシステム開発の目的を達成できた。
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