研究概要 |
本研究では,以下に示す固体のNaClで飽和したNaCl-AlCl_3系コンポジット溶融塩電解質を用いたAl濃淡電池を構成し,亜鉛浴中のAlセンサーとしての作動特性の検討と平衡起電力の理論的考察を行なった. 1.本センサーは約100ppmAl以上でAl濃淡電池として作動する. 2.隔壁としてβ-アルミナを用いたセンサーとこれを用いない場合についてセンサーの比較を行い,短時間では両者の起電力がほとんど一致すること,前者は初期応答性,亜鉛浴Al濃度変動に対する応答性,センサー寿命において優れていることがわかった. 3.このセンサーを用いた起電力法で希薄なZn-Al合金中のAl活量を450〜500℃の範囲で測定し,その熱力学的性質を明らかにした.また,Zn-Al-Fe三元系についても測定を行ない,無限希釈におけるAlの活量係数に及ぼすFeの影響について検討した. 4.鋼板の連続溶融亜鉛めっき・合金化亜鉛めっき製造現場におけるAlセンサー試験を行ない,確度約30ppm,寿命約10日程度の性能が得られ,実用センサーとして充分な性能を有していることが明らかになった. 5.実機操業においては,主として(1)亜鉛浴と接する電解質への酸化亜鉛の付着,(2)溶融塩電解質の蒸発による液体電解質逸失によってセンサー寿命が決まる事が明らかになった. 6.センサー寿命判定について交流抵抗測定による方法を検討し,(1),(2)の原因ともにインピーダンスの増加によって評価できることがわかった. 7.コンポジット溶融塩電解質の特徴である種々の塩類の組合せによって様々な金属成分のセンサーを構成する可能性について検討を行ない,Cd浴中のZn,溶鋼中のAlのセンシングの可能性を実験的,理論的に示した. 以上のように,実験室規模でのセンサーの基礎特性はほぼ当初の計画を満足するものであり,亜鉛メッキプラントおよびその他の溶融亜鉛メッキプロセスにおける実用化が期待される.またコンポジット電解質を用いた種々のセンサー開発が期待される.
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