研究概要 |
イットリウム固溶立方晶ジルコニアセラミックスを平板型固体電解質型燃料電池の電解質として用いる場合、発電効率向上のための電解質の薄肉化、大型化のための大面積化、耐熱応力性の向上のため、高強度化と高靭性化が実用化のための大きな課題である。本研究では高イオン導電性を有する立方晶ジルコニアの導電率を保持しつつ、機械的特性を付与できる可能性を検討し、高強度高イオン導電性立方晶ジルコニアセラミックス材料開発の基礎的研究を行った。 1.Y_2O_3を2〜8モル%固溶したイットリウム固溶ジルコニアセラミックスについて検討を行い、正方晶と立方晶の存在割合と機械的性質およびイオン導電率の関係を明らかにした。強度が要求される電解質では、正方晶ジルコニア粒子分散立方晶ジルコニアの利用が有効であり、特に5モル%Y_2O_3-ZrO_2の破壊強度は525MPa,破壊靭性値は7.9MPam^<1/2>で、900℃のイオン導電率は0.05Scm^<-1>であった。 2.8モル%Y_2O_3固溶立方晶ジルコニアに5〜30体積%Al_2O_3粒子を分散した複合セラミックスにおいては、20体積%Al_2O_3粒子分散立方晶ジルコニアの破壊強度は355MPa,破壊靭性値は3.3MPam^<1/2>,900℃のイオン導電率は0.06Scm^<-1>であった。正方晶ジルコニアあるいはAl_2O_3粒子分散立方晶ジルコニアでは、イオン導電率はやや低下するが、機械的特性は約3倍となることが判明した。 3.イットリウムとスカンジウムを同時固溶した立方晶ジルコニアでは、8モル%Y_2O_3固溶立方晶ジルコニアに比べて、破壊強度とイオン導電率ともに大きく向上した。2モル%Y_2O_3-6モル%Sc_2O_3同時固溶立方晶ジルコニアの破壊強度は214MPa,900℃のイオン導電率は0.141Scm^<-1>で、平板型固体電解質として優れた素材であることが判明した。本研究を通して、異なる2つの機能を同時に満たすセラミックス材料開発の基礎的研究成果が得られた。
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