研究概要 |
高分子の物理化学的性質を,周期性高分子だけではなく,非周期性が含まれている系についても得られるように,プログラムを拡張した。すなわち,ある大きさのオリゴマーにモノマーを順次付加させる,いわゆるElongation法によって,次々と延長していく高分子の電子状態をabinitio法(STO-3G)のレベルで求めた。そのうち,得られた軌道のなかから,モノマーが付加してもその電子状態が変化しない軌道(frozen軌道)と,電子状態が変化する軌道(active軌道)に分類する方法を確立した。次に,このfrozen軌道が,高分子の持つ周期性の性質をどの程度含んでいるかどうかをチェックする尺度を定義した。そして,この尺度がある閾値より大きいfrozen軌道を基底にして,エルネギー帯構造を計算したところ,通常の周期性境界条件によって計算して得られたエネルギー帯構造をよく再現した。すなわち,このElongation法によって得られたfrozen軌道により,非周期性を一部含む高分子のなかから,周期的な性質をひき出すことができることがわかった。 一方,非周期的な性質,いいかえれば局在化軌道を取り出すことも可能であることも見い出している。すなわち,モノマーが次々と付加して得られる一連の周期的な性質を包含するfrozen軌道と相互作用しない軌道と定義することによって,非周期的な部分を取り出せる方法を確立した。このように,周期性,非周期性の両方の性質を同時に一般的に求め得る方法を確立し,そのプログラムを現実の高分子に適用して,その物理化学的性質の予測に用いる予定である。
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