研究分担者 |
福原 健一 味の素(株), 中央研究所, 主任研究員
栗本 英治 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (90234575)
黒田 良孝 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (40080204)
野原 大輔 名古屋市立大学, 薬学部, 助教授 (60080214)
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研究概要 |
Protein refoldingは組み換えDNA法のdownstreamにおける重要なprocessの一つである。本研究の目的は、6M guanidinium chloride(GdnHCl)などに溶解し、random coil状になった球状タンパク質をrefoldingするに当たって、(1)hydrophobic coreを先ず形成させる、(2)N末を固定しC末側からrefoldさせる、(3)C末を固定しN末側からrefoldさせる、という3手段についてrefolding収率を比較することにある。 実験に当たっては(1)の手段としてhydrophobic core形成のためイオン性のrefolding media中でincubateする方法、(2),(3)の手段として、それぞれN末、C末をSepharoseなどの固体表面に共有結合で固定化する方法をとった。タンパク質としてはbovine pancreatic ribonuclease A(RNase),hen egg-white lysozyme(Lyzm)およびbacterial subtilisin BPN'(Sbtl)をとり上げた。 RNaseについては(3)のC末固定化が分子内amidationにより本質的に不可能であり、Lyzmの場合は固定化後の活性測定に難点があり、本研究の対象タンパク質となり得なかったけれども、Sbtlについて3手段を確実に比較試験することができた。Sbtlのhydrophobic coreを先ず形成する(1)の手段については、6MGdnHCl中にpH2.4で溶解したSbtlを1.5〜2M K-acetate中pH6.5でincubateする事によりrefoldingに成功した。ただし、Sbtlはproteaseであるためautolysisが進行し、refolding収率は最高30%にとどまった。この手段についての定量的評価はつぎに述べる固定化によりautolysisを阻止した実験系で始めて達成できた。すなわち、(2)N末固定、(3)C末固定両手段ともに6M GdnHClによる溶解とそれに続く2M K-acetate中でのrefoldingという操作を繰り返し実施し、3回目以降で両者とも100%のrefoldingを達成できることがわかった。その際、refolding mediaとして2M K-acetateの方が2M KClよりrefolding速度が大きいこと、N末固定の方がC末固定の場合よりrefolding速度が大きいことがわかった。要するに、(1),(2),(3)どの手段でも適切なrefolding環境を与えることによりほぼ100%のrefoldingを達成できるけれども、敢えて言うならば、今回のSbtlのrefoldingにおいては第一にhydrophobic core formation、次いでN末固定、続いてC末固定の順序で各手段の優位性を評価できると云えよう。
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