研究概要 |
1)不斉金属錯体の設計と合成‥‥ポリマ-化するために必要な非配位性官能基を有し、かつ金属中心まわりでキラリティ-を生ずる配位子として非配位の水酸基を有する1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(dhptaH_4)を配位子とするCo(III)錯体を合成し、さらに光学分割することによって光学活性なΔ-K[Co(dhpta)]を得た。この錯体をK^+の強力な補足剤であるクリプタンド222を用いてアセトニトリルに可溶化させ、各種酸無水物と反応させることによりdhptaの非配位の水酸基のアシル化が可能であることを明らかにした。安息香酸残基を導入した錯体(DMPA-H)[Co(Ben-dhpta)]{DMPA-H=4-ジメチルアミノピリジン陽イオン,Ben-dhpta=1,3-ジアミノ-2-ベンゾイルオキシプロパン-N,N,N',N'-四酢酸}のX線結晶構造解析を行い、エステル結合の存在を実証した。 2)不斉金属錯体のアルキル長鎖化とモノマ-化‥‥前項で得られたΔ-K[Co(dhpta)]錯体に長鎖脂肪酸(吉草酸、オクチル酸、ラウリル酸)残基を導入し、長鎖アルキル基を有する光学活性な錯体を効率良く得ることができた。電子吸収、円偏光二色性ならびに二次元NMRスペクトルにより錯体のキャラクタリゼ-ションを行った。吉草酸残基を導入した錯体をストリキニン(STC)を用いて光学分割に成功し、さらに分割剤を対イオンとする錯体(STC-H)[Co(Val-dhpta)]・6H_2O{Val-dhpta=1,3-ジアミノ-2-ペンタノイルオキシプロパン-N,N,N',N'-四酢酸イオン}のX線結晶構造解析を行い、脂肪酸とのエステル結合の存在を実証した。 3)光学活性ポリマ-の合成‥‥上記のクリプタンド可溶化によりK[Co-(dhpta)]錯体に高分子化のためのモノマ-として期待されるクロトン酸およびメタクリル酸残基の導入に成功し、現在その構造を決めるベくX線結晶構造解析を行っている。今後、本研究で得られたモノマ-残基を含む錯体のポリマ-化を目指し検討を行う予定である。
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