研究概要 |
金属アルミニウムは、豊富に電子を内包する電子源(還元剤)である。金属アルミニウムを電子源とする、新しい電子伝達系を用いて、炭素-炭素結合形成や特異的官能基変換を惹起できることを示してきた。本試験研究では、金属アルミニウムを電子源とする複合電子伝達係に関わる、以下の課題に取り組み、実用的展開のための基礎研究を検討している。 (1)アルミニウム金属表面から基質への電子伝達機構は、電子移動触媒として添加する金属レドックス、溶媒、添加剤等により著しく異なる。まず、複合レドックス系電子伝達のモデル化、反応のパターン化、反応場等の解析結果を有機的に統合し、電子伝達機構の解明と最適な高効率電子伝達系を究明する新しい方法について検討を加えた。 (2)CC14、CC13CF3等の1炭素及び2炭素ポリハロアルカンと各種親電子剤(カルボニル化合物、イミン、ピリジンetc.)との還元的付加反応及び付加体の1,2-脱離反応等の最適化を行い、アリール酢酸関連誘導体の汎用的合成法を確立した。 (3)直接にはアルミニウムとの電子移動が起こり難い遷移金属レドックス(Pd、Ni,etc)系に、第3の金属レドックス(Pb,Bi,Ti,etc)を介在させることにより、電子移動触媒系となることを見いだした。アリールハライドの還元カップリングに適用し、ビアリール関連誘導体の汎用合成法を開発した。 (4)上記多元系電子移動触媒系等による、選択的官能基変換、炭素-炭素結合生成反応をβ-ラクタム系抗生物質の変換反応に適用するこにより、β-ラクタム系抗生物質の新実用的合成法を開発した。
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