研究概要 |
高分子結晶の構造を従来にもまして信頼性の高いものにするために高性能X線イメージングプレートを用いた新しいシステム開発を試みている.平成3年度にシステムの立上げを行なったが,データ解析などの点で色々の問題点が現われてきた.平成4年度はこの問題点を解決することに主眼を置き,さらにいろいろの高分子試料についてX線回折測定を行なった.システムの改良点を列挙すると次のようになる. (1)イメージングプレート(IP)と試料の距離を7cmから1mまで自由に変更できるようにIP移動用のレールを延長した.その結果,広角散乱から小角散乱まで広い散乱角での測定が可能となった. (2)さらに広角のデータを集めるためには入射X線とIPとのなす角度を変化させることが必要である.台板を一枚追加し,IPのレールを移動と同時に回転もできるように改良した. (3)高分子構造の精密化のためには低分子モデル化合物の構造に関する情報がどうしても必要になる.そこでゴニオメーターを取り付け,IPにより精度高い反射強度データの集積が可能なようにした. これらの改良により,広い角度範囲にわたって信頼性の高いX線データが得られるようになった.この改良システムを用いていくつかの試料について温度変化などの測定を行なった.例えば,強誘電液晶高分子P1は僅かな作成条件の変化により非常にバラエティーに富んだ層構造を示す.今回,試料の温度を連続に変化させてX線測定を行なうことにより極めて複雑な,しかしシステマティックな層構造変化を呈することが見い出された.また,例えば,ポリテトラメチレンテレフタラート(PTMT)-ポリテトラヒドロフラン(PTHF)ブロック共重合体は延伸弛緩により2種類の結晶形の間を可逆的に転移するが,今回,その相転移に伴う広角および小角散乱パターンの変化を同時に測定することに成功した.
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