研究概要 |
高分子結晶のX線構造解析結果が必ずしも完全に信頼されていない現状を打破するために,イメージングプレートを利用した新しい高性能X線構造解析システムの開発を,この3年間にわたって行なってきた.その結果,次に述べるように,様々の目的に対処できる,いわば万能のX線回折データ収集総合システムがほぼ完成した. (1)高分子物質は結晶領域と非晶領域が混在しており,また結晶サイズもけっして低分子単結晶のように大きくない.従って,X線反射は極めてブロードであり,反射ピーク位置検出,プロファイル解析,積分強度評価などの点で大いなるあいまいさがあった.それ故,結晶格子パラメーター決定,反射の指数付け,構造因子算出などに大きな困難が伴っていた.今回,イメージングプレートにより測定した2次元パターンの画像解析システムを開発してこれらの問題を解決し,飛躍的に容易に構造解析上必要な情報を得ることに成功した. (2)高分子単結晶および低分子単結晶のX線構造解析を極めて精度高く決定できることを,いろいろの試料について確認した. (3)張力下における高分子の構造変化を詳細に追跡し,結晶弾性率などの精密決定が行ないえた. (4)小角および広角散乱が同時に測定でき,結晶内部での構造変化と高次組織構造の変化を同時に明らかにできることも判明した. 本システムが高分子の構造解析の分野に新しい風を吹き込むであろうことを祈念している次第である.
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