研究概要 |
研究計画書に記載した方法に従って蒸着重合装置を組み立てた。電気炉の設定温度と実際の熱分解部分の温度に差があることがわかったので,その補正曲線を作成した。また,小スケ-ルの実験に対応できるように蒸着部位の形状を改良した。 本装置を用いて,1,9-ジチア[2,2]オルトシクロファン,1,9-ビス(トリメチルシリルオキシ)[2,2]パラシクロファンおよびジスピロ[2,2,2,2]デカ-4,9-ジエンの蒸着重合を行なった。その結果,1,9-ジチア[2,2]オルトシクロファンは,気相での熱分解反応によって硫黄が脱離すると同時に芳香族化が進行してアンスラセンを与えることがわかった。一方,後者の二つの化合物からはいずれも無色透明なフイルムを得ることができた。これらのフイルムの化学構造は,両者の気相熱分解生成物の重合体であることが各種スペクトルおよび元素分析結果から確かめられた。すなわち,本重合装置によって副反応なく,目的の反応のみが進行したことがわかった。1,9-ビス(トリメチルシリルオキシ)[2,2]パラシクロファンの蒸着重合によって得られたポリマ-の脱トリメチルシリル化反応によって,主鎖に水酸基が結合した機能性高分子フイルムを合成することに成功した。さらに,ジスピロ[2,2,2,2]デカ-4,9-ジエンの蒸着重合においては,熱分解によって生成した活性なジラジカル中間休が異制化反応を経由してから重合したことが示唆された。そこで,蒸着部位を改良して熱分解ガスのトラップ実験を行ない,異性化反応生成物の単離に成功した。
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