研究概要 |
本年度は根の能動的吸水に着目し,根圧と出液速度の自動測定装置を完成させ,これらから水の通導抵抗を求めて検討し,根の水の通導抵抗の簡易測定法を確立することを中心として研究をすすめた。 1.圧力センサを茎基部に取り付けて行う根圧測定法について引き続き検討したところ,測定された根圧は地温の影響を大きく受け,また木部液の浸透ポテンシャルと密接な関係があったことから,本方法で作物の根圧を正確に測定できることがわかった(平沢)。 2.ひずみ計によって出液速度を自動測定することが可能となった(平沢)。 3.これらの装置を用いて,ダイズ,水稲において能動的吸水が行われている時の水の通導抵抗を求め検討した(石原・大川)。(1)ダイズ,水稲ともに開花期以後登熟に伴って出液速度は減少し,能動的吸水能力は低下した。根圧は登熟後期の水稲を除けばほとんど低下しなかったので,登熟に伴う能動的吸水能力の低下は主として水の通導抵抗の増加によるものであった。(2)水稲品種アケノホシは日本晴に比べて出液速度が大きく,能動的吸水能力が高かった。根圧には両品種で相違が認められなかったのでアケノホシが日本晴に比べて能動的吸水能力が高かったのは水の通導抵抗が小さいことによっていた。 4.水稲では能動的吸水が行われている時の水の通導抵抗は蒸散が盛んで受動的吸水が行われている時の水の通導抵抗に比較してかなり大きかった。しかし,受動的吸水が行われている時の水の通動抵抗の大きい作物は,能動的吸水が行われている時でも水の通導抵抗が大きく,両者には密接な関係のあることが推察された。このことから,本装置を用いて測定した根圧と出液速度とから作物の根の水の通導抵抗の大小を比較,推定することが可能であると考えられた(平沢・石原・大川)。
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