免疫誘導処理によるジャガイモ植物の病害抵抗性と生産力の増大

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03556007
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 道家 紀志 名古屋大学, 農学部, 教授 (80023472)
• 研究分担者: 梅村 芳樹 北海道農業試験場, ばれいしょ育種研究室, 室長
• キーワード: 植物免疫 / ジャガイモ植物 / 植物免疫誘導剤 / 植物免疫検定システム / ジャガイモ実生検定 / 全身的シグナル伝達 / スーパーオキシドジスムターゼ / ペルオキシダーゼ

研究概要

試験研究の3年目に入り、植物免疫試験成果と問題点をまとめ方向で、次の課題を追求し、結果と問題点を集約した。
(1)圃場栽培した植物の免疫処理効果の発育過程における塊茎形成や成長生理変化および病害抵抗性の変化を検定する簡易測定法ならびにマーカーを検索した。葉組織の一部の祖抽出液のGTP結合活性、フォスフォリパーゼA_2活性、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性、ペルオキシダーゼ(PO)活性、リポキシゲナーゼ活性、葉緑素含量変化を調べたが、SODとPOが免疫処理に対して+に応答する酵素変化として相関があり、新鮮重あたりの葉緑体の含量増加も生育促進応答のマーカーとして検出された。
(2)ジャガイモ植物のより有効な免疫誘導処理剤の検定法の開発の一環として、ジャガイモ種子より栽培した実生を用いて、下葉免疫処理法とPOおよびSOD活性変動をマーカーに、脂質過酸化反応物と既知誘導剤のアラキドン酸を塗布処理による植物免疫誘導のテスト試験を行った。用いた種子は自殖種子を用いたために、個体形質が分離する影響があり、興味あることに、植物免疫に応答しやすい個体と応答しにくい個体があることが判明し、植物免疫における遺伝的背景や品種の吟味の重要性を指摘した。
(3)植物免疫処理における外部シグナル因子の内部シグナル化とその全身的伝達機構の解明が、今後の実用的免疫誘導剤の関発に重要である。植物がエリシター応答に当たって活性化させる活性酸素生成系は、植物の原形質膜と可溶性タンパク質因子、Ca^<++>、ATPの存在下の無細胞系でエリシターにより活性化され、また、活性酸素生成系や過酸化水素溶液の植物組織への投与で、処理組織面より離れた組織で速やかな細胞の生理的変化が捉えられ、ファイトアレキシン生産・蓄積をも誘導する作用のあることを確認し誘導剤開発視点に、酸素ラジカル反応の関与を考慮する有意性を指摘した。
(4)植物免疫処理は、一過性の植物応答として病害抵抗性の増強と植物の成熟促進効果を示し、ジャガイモの春作暖地栽培のような短期栽培では一過性の誘導効果が意味をもち、内生シグナル因子に匹敵する免疫誘導剤の開発の可能性を指摘した。

研究成果

• [文献書誌] Sanchez,L.M.: "Elicitor-induced chemiluminescence in cell suspension cultures of tomato,sweet pepper and tobacco plants and its inhibition by suppressors from Phytophthora spp." Plant Science. 88. 141-148 (1993)
• [文献書誌] Kawakita,K: "Factors,affecting in vitro activation of potato phospholipase A2." Plant Science. 93. 183-190 (1993)
• [文献書誌] Doke,N.: "In vitro activation of NADPH-dependnent O_2^-systems in a plasmamembrane-rich fraction of potato tuber tissues by treatments with an elicitor from Phytophthora infestans and digitonin." Physiol.Mol.Plant Pathol.(In press). (1994)
• [文献書誌] Kawakita,K: "Involvement of GTP-binding protein in signal transduction in potato tubers treated with the fungal elicitor from Phytophthora infestans" Plant Science. (In press). (1994)
• [文献書誌] Doke,N.: "Photooxidative Stress on Plants:causes and Amelioration.Chapter7 Involvement of superoxide in signal transduction:Response to atack by pathogens,physical and chemical shocks,and UV irradiation." Foyer,C.,and Mullineaux,P.(Eds.) CRC press Inc., 395(177-197) (1994)
• [文献書誌] Doke,N.: "Host-Specific Toxin Biosynthesis,Receptor and Molecular Biology Signal Transduction and Hypersensitive Reaction in Phytophthora-Solanaceae Plant Pathosystem:Superoxide Generating Reaction.In:" Kohomoto,K.et al. Tottori University, (1994)