研究概要 |
不斉構造の解析手段としての、円二色性スペクトル(CD)、NMR、HPLCの各種分析法が一つの誘導体化試薬によって、高感度にさらに効率良く行えることができれば簡便で実用的な絶対構造解析法の開発が可能であると考え、これを満足する新しい試薬の設計と合成を試みた。その結果、この条件を全て満たすうえに、高い蛍光性を有した、新規不斉誘導体化試薬、(+)-TBMB並び(+)-TBBカルボン酸の開発を行うことができた。さらに、X-線結晶解析により、その絶対配置を(2S)-配置と決定した。 次に、生体成分の絶対配置の解析に両試薬を用いた高感度分析法の開発を試み、以下の分析システムを開発することができた。 i)糖のD,L-分析システムの開発 還元糖を1-ブロモアセテート体に変換後、TBMBカルボン酸でラベル化を行う反応系を考案し、定量的にラベル化する条件を確立した。本ラベル化反応の開発により、NMR法による簡便分析法、HPLCによる超微量分析法を開発する事ができた。 ii)アミノ酸のD,L-分析システムの開発 アミノ酸のラベル化は、遊離アミノ酸のアミノ基に直接ラベル化を行う方法と、カルボキシル基をメチルエステル化後ラベル化する方法の2種類を考案した。そしてNMRによる簡便D,L-識別法と、HPLCによる、超微量分析法を確立することができた。 iii)グリセリド類のD,L-分析システムの開発 光学活性ジグリセリドをシリル誘導体に変化後、アシル基をグリニャ-ル試薬で外したのちTBMB化するラベル化法を確立した。そして、CDを用いた立体配置解析を開発した。また、光学純度を精度良く決定するための、光学活性カラムHPLC法を開発した。 本法により、トリグリセリドのリパーゼによる加水分解反応の立体化学を世界に先駆けて明らかとすることができた。 iv)絶対構造分析オンラインシステムの試作 TBMBラベル化後のHPLCとCDをオンライン化した分析システムを試作した。これにより、標準品を必要とすることなく、グリセリド類の光学純度並びに絶対配置を簡便に決定することが可能となった。
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