植物シスタチンの抗感染効果の検証・工業生産・分子育種

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03556015
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 荒井 綜一 東京大学, 農学部, 教授 (20011934)
• キーワード: システインプロテイナ-ゼインヒビタ- / オリザシスタチン / 抗ウィルス効果 / ポリオウィルス / コメ種子

研究概要

植物シスタチンのうちコメ種のオリザシスタチンを供試し、ポリオウィルスに対するCytopathic effect(CPE)をしらべたところ、オリザシスタチン-Iおよび-IIは1nmol/ml以上の濃度でウィルスによる細胞破壊を抑え、抗ウィルス効果があることが判明した。また、N末端を29残基削ったオリザシスタチンは0.25nmol/ml以上の濃度で抗ウィルス効果を発揮した。一方、低分子のシステインプロテイナ-ゼインヒビタ-であるE-64は8μmol/mlの濃度でも阻害効果は観察されず、細胞透過性を高めるようにE-64を修飾したE-64-C、ロキシスタチンも同様に全く阻害効果を示さなかった。次に、CPEテストにおけるオリザシスタチンの抗ウィルス効果を数量的に検討するため、プラ-クアッセイを行った。オリザシスタチン無添加群で3.0×10^7PFUの時、オリザシスタチン-Iおよび-IIを4nmol/ml以上の濃度で添加したときは10^5PFUの桁になった。PFUが2桁下がることは一般に100%の阻害効果を有すると判定されるため、これ以上の濃度では100%の抗ウィルス効果を有すると判断される。また、N末端欠失オリザシスタチンについては1nmol/ml以上の濃度で100%の抗ウィルス活性を有することが判明した。E-64、E-64-C、ロキシスタチンはプラ-クアッセイでも活性は示さなかった。以上のように、オリザシスタチンが抗ウィルス効果を持つことが明らかになったが、ポリオ以外のウィルス(ヘルペスウィルス・ロタウィルス等)についても現在検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Hirohito Watanabe: "Molecular cloning and gibberellin-induced expression of multiple cysteine proteinases of rice seeds (oryzains)" J.Biol.Chem.266. 16897-16902 (1991)
• [文献書誌] Junko Funaki: "Modulating the conditioning of meat by use of oryzacystatin,a cysteine proteinase inhibitor of rice seed origin" J.Food Biochem.15. 253-262 (1991)
• [文献書誌] Soichi Arai: "Papain-inhibitory activity of oryzacystatin,a rice seed cysteine proteinase inhibitor depends on the central Gln-Val-Val-Ala-Gly region conserved among cystatin superfamily members" J.Biochem.109. 294-298 (1991)
• [文献書誌] Hiroto Kondo: "Gene organization of oryzacystatin-II,a new cystatin superfamily member of plant origin,is closely related to that of oryzacystatin-I but different from those of animal cystatins" FEBS Lett.278. 87-90 (1991)
• [文献書誌] Makoto Abe: "Some properties of a cysteine proteinase inhibitor from corn endosperm" Agric.Biol.Chem.55. 2417-2418 (1991)