研究概要 |
本試験研究において,dehydrosinefunginを大量生産するための生産条件を検討するに際して,まず,迅速にして正確なる定量法の確立が不可欠であった。本化合物生産株の培養液中には,種々の化合物が含まれるため,高速液体クロマトグラフィ-による定量分析を行う際にはイオン交換樹脂による前処理を行う必要があり,アンバ-ライトCG-50カラム処理によって,10倍に濃縮された活性画分を得ることができた。しかし,この画分には,dehydrosinefunginのほかに,活性の弱いsinefunginと不活性のamidinosinefunginが含まれており,この3化合物を互いに分離する必要があった。これらの化合物は塩基性アミノ酸を含む水溶性の核酸系抗生物質であるので,ペア-ドイオンクロマトグラフィ-によって,この3種の化合物を完全に分離する条件を検討した。その結果,ODSカラムを用い,1-ブタンスルホン酸ナトリウムをカウンタ-イオンとし,移動相に0.02Mリン酸-カリウム溶液を用いるペア-ドイオンクロマトグラフィ-が最も効果的な分離を示した。本法による定量値を指標にして,前駆物質の添加や炭素源,窒素源など培地組成の吟味培養条件の探索および高生産株の選抜を行い,生産性を従来より10倍高めることに成功した。現在,培養液1lあたり20mg生産できるようになっている。 一方,本化合物の松樹体への接種法についても,標品として,酒石酸モランテルを用いて,予備的な検討を加えた。植物用人工気象器のなかで,三年生苗木の樹体に挿入したピペットチップから薬剤溶液を供試することにより,信頼できる結果が得られることがわかった。
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