試験機の応力制御システム、試験機本体の操作性、自動計測システムを京都大学のキャンパスから採取した土を用いて試験を行い、その調整と改良を行った。ついで、1984年の長野県西部地震で発生した御岳大崩壊と1990年のイラン地震で発生したガルディアン地すべりからサンプルを採取して、この両地すべりについて地震時の地すべりを再現するための試験を行った。その方法は次の通りである。 1)サンプルをスラリー状態にしてせん断箱にいれてから地すべり土層の自重に相当する垂直応力で圧密し、さらに斜面土層の自重によるせん断応力を載荷する。 2)地震力に相当する繰り返し応力を0.1Hzの周期で載荷する。 3)その結果、せん断破壊が生じればその破壊後のすべり速度、変位、体積変化、およびせん断応力と垂直応力を測定する繰り返し応力を変化させることによって地震時に地すべりが発生する限界の地震力を実験的に推定することが可能と思われ、事実、両地すべりにおいて、地震の際に観測された地震力で地すべりが発生することが裏付けられた。また、御岳大崩壊のすべり面となった軽石層では繰り返し載荷によってせん断破壊が生じるとマサツ抵抗が急激に低下し、せん断が急速に進行することが見いだされた。一方、ガルディアン地すべりの試料では尺取り虫的なゆっくりしたせん断が生じた。御岳とガルディアンの違いの原因は試験後の試料の状態の観察より、御岳大崩壊の軽石層ではせん断面で粒子が著しく破砕されることにより体積収縮が生じ、せん断面で間ゲキ水圧を発生させているためと推定された。この間ゲキ水圧発生を直接測定するため、試験機のせん断箱をせん断中も非排水状態に保て、発生した間ゲキ水圧が正確に測定できるように種々の試みを行い、現在、最終案に基づいてせん断箱の改良を行っている。
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