地震による地すべりは世界各地で大災害を引き起こしている。地震の予知ができても何処で地すべりが発生するか、何処まで移動するか予知できなければ、災害を軽減する方策はとれない。逆に地震時の地すべりの発生条件、運動範囲を予知できれば、地震の予知ができなくても土地利用の変更や地すべり対策により災害を未然に防ぐことが出来る。しかしこれまで地震時における地すべりの発生を再現できる試験機が開発されていなかった。本試験研究では、地震時の斜面土層内の応力とすべり面の形成に至る変形、さらに破壊後の地すべりの運動を再現する試験機の開発に成功した。この研究成果は共同通信を通じて全国の新聞に配信(平成4年8月21日)されるとともに、平成5年9月1日にはNHKのニュース9でも地すべり再現試験機の開発成功が報じれらた。 標準砂や京都大学お苗畑土を用いた基礎試験の後、地震時の地すべりを再現する試験としては、1984年の長野県西部地震の際に発生した御岳山の大崩壊から採取した風化軽石層(パミス)、1980年のイラン地震の際に発生したガルデイアン地すべり及びファタロク地すべりから採取した黄土(レス)、また地震による地すべりの発生が懸念されている中国西安市近郊にある華清池(楊貴妃の宮殿)裏山から採取したレス、さらに同じく地震による地すべりの発生が懸念されている長崎県雲仙の眉山から採取した火砕流堆積物を用いて地震時の地すべりの再現試験および地震時の地すべりの発生条件と発生後の運動速度を調べる研究を行った。これらの研究により本試験機により、地震時の斜面土層内の応力、変形、地すべり発生を再現でき、また地震時の地すべりの予知・予測に適用できることがわかった。
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