研究課題/領域番号 |
03556022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 尭介 東京大学, 農学部, 助教授 (30012074)
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研究分担者 |
小林 則夫 レンゴー株式会社, 福井研究所, 主任研究員
松本 雄二 東京大学, 農学部, 助手 (30183619)
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キーワード | ラジカルスルボシ化反応 / リグニン / 酸糖化リグニン / スルフォン酸基 / 水溶性リグニン / リグニン系高分子電解値 / 分散性 |
研究概要 |
化学反応性の極めて乏しいマカンバ酸糖化リグニンを出発物質として、ラジカルスルフォン化反応による水溶性化のための最適条件を明らかにするとともに、この条件においてはマカンバ酸糖化リグニンがほぼ定量的に水溶性化することを見いだした。また、スギ酸糖化リグニン、スギおよびマカンバクラフトリグニン等についても検討を進め、それらをほぼ定量的に水溶性化し得る最適処理条件を明らかにした。一方、スギおよびマカンバ爆砕リグニンについては、ラジカルスルフォン化処理条件の調整のみでは充分な水溶性化を達成することはできなかった。本来反応性に富むと考えられる爆砕リグニンが、本反応に対しては低い反応性を示したことは、反応機構の面からも興味深い事実である。 これらの爆砕リグニンは、酸あるいはアルカリによる加熱前処理を行なうことによって、飛躍的にその反応性を高めることが出来た。これらの前処理中に起こるリグニンの縮合反応が、ラジカルスルフォン化反応に対する反応性を高めていると考えられる。この点について明確な知見を得る目的で、4種のリグニンモデル化合物を用いた検討を行なった結果、側鎖α-位に酸素の結合していない構造がベンジルアルコ-ル型構造に比較して著しく高い反応性を示した。また、反応生成物について検討した結果、芳香核に対するスルフォン化反応生成物の他に、側鎖α-位に対するスルフォン化物および環開裂生成物の存在が確認された。これらの事実から、本処理においてはラジカルスルフォン化反応と通常のアルカリ性酸素酸化反応の両者が起こっており、亜硫酸ナトリュウム添加量と酸素圧によって、両者の寄与が変動することが明らかになった。 また、一部の試料についてカオリン、石炭粉末等に対する吸着性、分散性を検討した結果、分子表面にスルフォン酸基およびカルボキシル基を有し、極めて親水性に富むリグニン系高分子電解質が、疎水性の石炭粉末に対し良好な吸着性を示すことが明かとなった。このことはリグニン系高分子電解質の分子形態を考える上でも、また今後その特徴を活かし用途を考える上でも、極めて重要な知見であると考えている。
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