研究概要 |
水溶性セルロ-ス(HEC),デンプン、パルプ等の多糖類,およびリグニンを多量に含有している木質繊維を基材とし,これにモノマ-(アクリルアミド,アクリル酸メチルなど)をグラフト重合させ,これの枝ポリマ-を部分加水分解する方法で高吸水性材料を製造すると共に,得られた材料の吸水性等の物性および吸水ゲルの構造と性質について検討した。得られた結果の主な点は以下の通りである。 1)HECやパルプのポリアクリルアミドグラフト物からの吸水性は他の多糖類を基材(マンナン,寒天,デンプン,アルギン酸など)とするそれや市販の合成樹脂系よりも大きく,吸水倍率は純水で3000倍,生理食塩水では300倍に達する。なお,これらの吸水性は試料のグラフト率が200%程度の時に最大を示す。 2)フェノ-ル性物質には重合抑制作用があるため,グラフト重合が従来因難とされてていた木質繊維への重合は基材を予め過酢酸処理して,パ-オキサイド基を導入した後,チタン塩を添加してレドックス系で重合を開始するのが有効であることを見出した。 3)水溶性セルロ-ズおよびその他多糖類を基材とするグラフト共重合体の吸水性は幹ポリマ-の粘性と相関関数がある。また,含水ゲルの粘性の濃度依存性は大きく,試料の平衡膨潤時の濃度付近でのその濃度依存性が変化する。 4)吸水ゲルの多孔構造を検討するには,分子サイズの異なる溶質をゲルに拡散させる,溶質排除法が有効であることを見出した。 5)吸水ゲル中の水の状態を吸湿等温線から検討した結果,HECグラフトポリマ-の場合,1.4g/g以下の吸湿量では水分子はクラスタ-を形成せず,高分子と相互作用していることがわかった。
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