研究概要 |
水溶性セルロース(HEC),パルプ等の多糖類あるいはリグニンを含む木質繊維を基材とし,これにモノマー(アクリルアミド)をグラフト重合させ,これの枝ポリマーを部分加水分解する方法で高吸水性材料を製造すると共に,得られた材料の吸水性等の物性および吸水ゲルの構造と性質について検討した。得られた結果の主な点は以下の通りである。 1)多糖類を基材とする高吸水性材料が吸水したヒドロゲルにはどのような細孔が存在しているかを明らかにするため,溶質排除法によって評価した。その結果,純水中で膨潤したゲルの場合,吸水された水の大部分は560Å以上の大きな口径の孔に存在している。また,塩類溶液中で収縮したゲルの場合には大きな細孔(560Å以上の細孔)が優先的に収縮することによって,試料の吸水倍率が低下していることがわかった。 2)高吸水性ポリマーの吸水したゲル組織構造は通常の高分子水溶液(HEC)のそれとは異なり,蜂の単状の構造をとっていることをクライオセム観察によって確認した。 3)これらのヒドロゲルの水分散液の粘度はHECのような水溶性高分子溶液のそれよりもはるかに高い。 4)木質繊維からのグラフトポリマーの吸湿特性は典型的な乾燥剤であるシリカゲルに比べて,非常に高い吸湿能を有し,特に,高湿度状態ですぐれた吸湿性を示す材料であることを明した。 5)高吸水性材料の水溶液吸収における溶質の影響を水の構造形成性の立場から検討し,水の構造破壊性の大きい溶質を含む場合に水溶液吸収量が大きいことなど,吸液量は溶質の水構造形成性および動的水和数と相関関係にあることを明らかにした。
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