研究概要 |
水溶性セルロース(HEC)あるいはパルプを基材とし,これにモノマー(アクリルアミド)および架橋剤(メチレンビスアクリルアミド)を加えてグラフト共重合あるいは基材のない状態で架橋ポリマーを合成した後,重合したポリアクリルアミド部を部分加水分解する方法で高吸収性材料を製造した。得られた材料の吸水性等の物性および吸水ゲルの構造と性質について検討した。 得られた結果の主な点は以下の通りである。 1)セルロースグラフト共重合体の塩類溶液中における膨潤挙動は高分子電解質ゲルに関するFloryの理論に定量的には従わず,膨潤度は中性塩(NaCl)濃度の対数値と直線関係にあることがわかった。 また,この膨潤挙動に及ぼす枝ポリマーと幹ポリマーの構造因子の影響を検討し,セルロースグラフト共重合体の膨潤はアミロースグラフト共重合体や架橋部分加水分解ポリアクリルアミドのそれらに比べ,塩類濃度の影響を受け難いのは,分子類が剛直で水中での広がりの大きいセルロース幹ポリマーが,枝ポリマー電解質網目の広がりに影響するためであることを明らかにした。 2)ヒドロゲルの粘弾性挙動のゲル濃度および塩類濃度等の環境条件による変化は細孔のサイズ分布の変化に基づくところが大きいことを示した。 3)セルロースグラフト共重合体の吸水したゲルの組織構造はデンプングラフト共重合体,部分加水分解ポリアクリルアミドゲルあるいは通常の高分子水溶液(HEC)のそれらとは異なり,蜂の巣状の構造をとっていることをクライオセム観察によって確認した。
|