研究概要 |
本研究の目的は,複式干拓締切過程における潮流速の3次元予測手法の開発にある。実海域の潮流速を数値シミュレ-ションによって予測しようとする場合,計算結果の妥当性を検討するための実測デ-タが非常に重要となる。特に,本研究で開発を予定している3次元流動解析法の検証には,潮流速の平面的な分布と併せて,鉛直分布の実測デ-タが必要不可欠となってくるが,このようなデ-タは極めて少ないのが現状である。そこで,今年度は研究の第1歩として,鉛直プロファイルの測定を可能にする現地観測用の流速計を開発し,検証デ-タの蓄積に努めた。先ず,現地観測用プロペラ流速計の開発を完了した。この流速計は,プロペラの回転の検出に磁界の通過にともなって電位差を生じるホ-ルICを利用しており,小型軽量を特徴とし,これを鉛直方向に並べることによって流速の鉛直分布を密に測定することが可能となった。現地観測は,現在干拓事業が進行中の長崎県諌早湾で行なった。現地観測は鉛直方向の測点が十数点になるが,全測点の出力信号を同時に収録するために設備備品費に計上したデ-タ集録装置を使用した。一方,質量保存則及びナビアスト-クス運動方程式の3次元差分化を行ない,アルゴリズムにおけるメッシュの増減法の検討を開始した。その際,既に開発済みの平面2次元及び鉛直2次元の流動解析コ-ドのアルゴリズムを応用することによって開発を進めている。これまでに平面2次元場を対象として,固定境界(陸境界)の処理と干潟の発生に伴う計算点の消失を処理するために,境界指標を定義し,これを利用してアルゴリズムを簡略化・汎用化している。また,干拓貯水池の鉛直2次元場を対象として,水位の変化にともなって差分格子点が増減するアルゴリズムも開発済みである。これらのアルゴリズムを有機的にリンクすることによって,3次元潮流場でのメッシュの増減のアルゴリズムを開発中である。
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