研究概要 |
本研究の最終的な目的は,干潮時に干潟が発生するような浅海域での3次元流動解析の計算コードの開発にある.開発に際して,計算結果の妥当性を検証するための実測データが非常に重要となる.ところが,実海域での潮流速の実測データ,特に本研究で開発を予定している3次元流動解析の計算結果の検証に必要となってくる潮流速の鉛直分布の実測データは極めて少ないのが現状である.この点を補完するため,平成3年度に引き続き現地観測による検証データの蓄積に努めた.今年度の観測は,平成4年7月31日の大潮下げ潮時と12月14日の大潮上げ潮時に干拓事業が進行中の長崎県諌早湾で行った.諌早湾は,干潮時に広大な干潟が露出する典型的な干拓適地である.観測地点は,平均水深約3mで,大潮干潮時には水深がほぼゼロ,大潮満潮時には約6m程度の水深となり,閉鎖性内湾での潮位の変動に伴う流況をとらえるためには極めて良好な地点である.さらに,潮流場での鉛直方向の渦動粘性係数等を詳細に検討するため,現地観測と並行して水理実験用回流水槽を用いて室内実験を行った.この水理実験用回流水槽は,インバータ・モータをパソコンで制御することによって,実海域の潮流場のように周期的に変動する流況を再現できるものである.一方,質量保存則及びナビア・ストークス運動方程式の三次元差分化を行ない,アルゴリズムにおけるメッシュの増減法の検討を昨年度に引き続き行った.すでに開発済みの平面2次元流を対象とした境界処理アルゴリズムと,水位の変化にともなって差分格子点が増減する鉛直2次元流を対象に開発したアルゴリズムを有機的にリンクすることによって,現在,すでに仮想海域を対象とした基本コードの開発は完了した.これらを基にした実海域を対象とした計算コードの開発を現在進めているところである.
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