研究概要 |
複式干拓締切過程で発生する土砂輸送,海底地形変形さらに海域の濁りなどは,底層の流動変化を詳細に知ることによって初めて厳密な予測が可能となる。その意味で,近辺海域の環境保全を重視した干拓工事の施工には3次元流動解析が必要不可欠である。ところが,潮差の大きい沿岸域における3次元流動解析の問題点は,解析途上で干潟が発生し,差分格子点が消滅する点にある。この問題を解決すべく,昨年度に引き続き,以下の検討を行った。 先ず,2つのアプローチから3次元流動解析アルゴリズムの開発を進めた。 その一つが,3次元運動方程式と連続式にコントロールボリューム法を適用して,直接差分展開式を求めようとするもので,従来から開発済みの鉛直2次元解析で得られたコントロールサーフェスに関する知見を導入した。 他方が,2次元単層モデルから得られた線流量を,3次元の運動方程式と連続式を用いて鉛直方向に振り分ける方法である。干潟の発生を考慮した2次元単層モデル(陽解法)は既に開発しており,これを応用したものである。さらに,計算時間の短縮を目指して陰解法の検討も行った。 また、3次元流動解析では粘性項の評価に交換係数モデルを使用したが,その際重要となる渦動粘性係数(渦動拡散係数)や底面剪断応力の評価法を検討する段階で,これら水理パラメータの設定法を検証するため,底泥の巻き上げを伴う浅海域の濁り解析(2次元単層モデル)や干拓貯水池における塩分解析(鉛直2次元モデル)などを行った。 さらに,3次元解析の計算結果の検証データを得るため,今年度も長崎県諫早湾で大潮時に底面近傍の流速分布の測定を中心とした現地観測を行った。 以上を総合して,水位変動が大きく,差分格子点が消滅する浅海域の3次元流動解析アルゴリズムを解明し,実用可能な新しい知見を得た。
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