研究概要 |
本年度は,若干遅れていた高性能EWSを用いてFORTRAN及びC言語によりニューラルネットワーク型ES(NES)の構築を行った。本NESは、入力ユニット数9、中間ユニット数12、出力ユニット数15から成る基本的に3層以上の階層構造型人工神経回路網(ネットワーク)で、知識表現形式がPDP型である。ネットワークをエキスパートシステムにするため,さらに重点的にヒューマンエキスパートに対して老朽溜池改修・多目的活用に関する「アンケート調査」及び「聞き取り調査」を行い、知識の流れ・関連性を意味ネットワークとして表現した。この意味ネットワークをできる限り客観的かつ正確に表現するために、調査結果の数量化3類及びISMによる構造解析を行い、溜池の老朽化の原因、現象並びに対策などの要因間の関連度を抽出した。その結果、ネットワークを形成する各層各ユニット間の結線(すなわち、リンク)関係が明らかとなり、このネットワークを学習させるための教師信号(データ)の組を作成することができた。まず、従来からのシミュレータを用いて、誤差逆伝播法と最急降下法または共役勾配法との組み合わせによる「学習」を行ったが、必ずしも十分な学習ができないことが分かった。そこで、新たな学習アルゴリズムとして拡張カルマンフィルタによる手法を開発した。この手法を用いて学習させると極めて高速でしかも高精度な学習ができ、リンク荷重(知識ベース)を求めることができ、基本的な老朽溜池改修・多目的活用NESを構築することができた。さらに、地元、大阪府堺市を対象に溜池関連の基本的データベースを充実させるため、溜池現況画像及び地図等も取り入れ、従来型のファジィルールベース型ESを含め、マルチメディア対応のオブジェクト指向型DBMSに拡張・改良した。これらの成果は、老朽溜池改修支援・多目的NESを充実させるために不可欠であることが分かった。
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