研究概要 |
本研究の最終年度に当たり,前年度までに構築した老朽溜池改修と多目的活用・支援ニューラルネットワーク型エキスパートシステム(NES)の改良とEWS(HP9000)から本格的にパソコン(PC9801DA)への移植を試みた.まず,老朽溜池改修・多目的活用のための知識ベース再構築のため,大阪府,兵庫県ならびに堺市の溜池担当技術者との意見交換を行い,ファジィ集合論に基づく知識の構造分析(F.S.M.)によって知識ベースおよい関係ネットワークの再整理・統合をはかった.その結果,老朽溜池改修に関する本質的な知識をそこなうことなく,コンパクトな知識関係ネットワークを構築し,ニューラルネットワークにおけるユニット数を軽減することができた.そのため,NESで最初に問題となる学習パターン数をかなり軽減することができたと考えられる.したがって,パソコンレベルでも十分にNESを構築できることが分かった.また,前年度より,NES構築で最も重要な「学習時間と精度」についても,従来のBP法に対して高速化と高精度化のために適応アルゴリズムの一つである拡張カルマンフィルタを導入したシステムを開発し,本NESの学習に適用しているが,さらに,学習精度の向上と収束の高速化のためにアルゴリズムの改良をはかり,かなり大規模なネットワークの学習も可能となった.つぎに,基本となる溜池データベースと本NESとの統合をはかるため,大阪府下堺市の主要溜池100有余を選択し,XBASE言語によって溜池画像情報,基礎統計を含むグラフ表示のオブジェクト指向を導入したニューラルネットワーク型DBMSを構築した.これは,前年度導入した視覚情報システムをさらに改良したもので,溜池を環境要素の中心として積極的に活用するためのシステムであり,より現実的なものに発展させることができる. 現在,2,3の未改修溜池に本システムを適用する方向で準備を進めている段階である.このように,基本データベースシステムのマルチメディア化と共にNES部分の学習パターン数の軽減により,小さなシステムでも十分に現実性の高い診断型のNESを構築でき,さらに,実際の改修計画のために設計型のシステムへの移行の可能性を示すことができた.また,本研究を発展させ,総合的に周辺環境に適した溜池の利・活用を迅速に判断し,景観的にもシミュレートできる様なシステムに近づけて行きたい.
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