研究課題
平成3年度は、既知のホスファタ-ゼ阻害剤であるオカダ酸(OA)、カリクリンA(CL-A)、ト-トマイシン(TM)およびミクロシシチンLR(Mic-LR)について各種ホスファタ-ゼ活性に対する作用を比較検討するとともに、平滑筋に対する作用を検討した。CL-AおよびTMは1型ならびに2A型ホスファタ-ゼに対してあまり選択性が認められなかったが、OAは1型ホスファタ-ゼに比べて2A型ホスファタ-ゼに対して約20倍強い抑制作用を示した。また、Mic-LRは、OAに比べてその選択性は弱いものの、2A型ホスファタ-ゼに対して約3倍強い抑制効果を示した。さらに、いずれのホスファタ-ゼ阻害薬もミオシンB中に含まれる内因性ホスファタ-ゼ活性を抑制した。これらのことから、既知のホスファタ-ゼは1型および2A型ホスファタ-ゼに対して選択性のないタイプ(CL-AとTM)と2A型ホスファタ-ゼに対してより選択性の高いタイプ(OAとMic-LR)に分けられた。また、いずれのタイプも2B型および2C型ホスファタ-ゼに対してはほとんど作用しないことも明らかにされた。次に平滑筋に対するこれらのホスファタ-ゼ阻害剤の作用について検討した。いずれのホスファタ-ゼ阻害剤もCa^<2+>に依存しない収縮を生じることが明らかにされた。また、OAは2A型ホスファタ-ゼを選択的に抑制する低濃度域で平滑筋弛緩作用を示し、1型および2A型ホスファタ-ゼを共に抑制する高濃度域で平滑筋を収縮させることが明らかにされた。このことからホスファタ-ゼ阻害剤による平滑筋収縮作用は1型ホスファタ-ゼの抑制に起因し、平滑筋弛緩作用は2A型ホスファタ-ゼの抑制によると考えられた。また、ミオシンBにおいて、Ca^<2+>除去下でもホスファタ-ゼ阻害剤の適用によりミオシン軽鎖のリン酸化が増加することから、ホスファタ-ゼ阻害剤によるCa^<2+>に依存しない平滑筋収縮は、Ca^<2+>非依存性のミオシン軽鎖キナ-ゼが活性化されることによりミオシン軽鎖のリン酸化が生じることに起因するものと考えられた。また、新たなホスファタ-ゼ阻害剤の探索として、海綿由来の毒としてミカロライド-A、ビステオネライド-B、ステレッタマイド-Aおよびハリクラミン-Aなどのホスファタ-ゼ阻害作用の有無を平滑筋収縮を指標として検討したが、ホスファタ-ゼ阻害作用をもつ海綿毒は見出されなかった。しかし、今後もさらにたの候補物質について検索を行う予定である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)