研究課題/領域番号 |
03557007
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
片岡 喜由 愛媛大学, 医学部, 教授 (20025589)
|
研究分担者 |
中村 洋一 愛媛大学, 医学部, 助手 (90180413)
三谷 章 愛媛大学, 医学部, 助教授 (50200043)
|
キーワード | スナネズミ / 海馬 / 脳温 / マイクロダイアリシス / グルタミン酸 / カルシウム / 遅発性ニュ-ロン死 / ニュ-ロン保護作用 |
研究概要 |
1.スナネズミ脳内に温度測定用プロ-ブを挿入し、頭蓋外より白熱光とファンを微調節作動しながら脳温を所定のレベルに維持しつつ、マイクロダイアリシス法により海馬CA1領域の細胞外グルタミン酸濃度の変動を分析した。脳温37℃下で両側総頚動脈を結紮することによる5分間の一過性前脳虚血負荷により、グルタミン酸レベルの急激な上昇が誘発され、虚血前レベルの15-20倍に達するが、35℃下ではそのレベルは半減し、33℃下では37℃下のレベルの約4分の1であった。一方、37℃下に虚血を負荷した動物群ではその約90%において海馬CA1ニュ-ロンが遅発性壊死に陥ったが、35℃実験群では60%の動物が、また33℃実験群では全ての動物が遅発性壊死をまぬがれた。海馬CA1ニュ-ロンの遅発性ニュ-ロン壊死を誘発するグルタミン酸臨界濃度は、マイクロダイアリシス潅流液中13-17μMであることが明らかとなった。 2.スナネズミ海馬スライスを潅流し、カルシウム・微小蛍光法を用いて低酸素低グルコ-ス負荷により誘発される急速な領域選択性の高いCA1領域の細胞内カルシウム濃度上昇の潜時を分析した。また同時に、シャッファ-側枝の電気的刺激に応答するCA1ニュ-ロン樹状突起層の誘発電位を記録した。潅流温度を37℃に維持した場合のカルシウム上昇潜時は、平均130秒であった。温度を35℃、33℃、31℃で潅流した場合、それぞれ平均182秒、232秒、277秒であり、温度依存的な低温化による潜時延長が認められた。またカルシウム上昇に伴って誘発電流が陰極側に大きくシフトし、この時点で膜の脱分極が生じたことも明らかとなった。これらの結果は、軽度低脳温のニュ-ロン保護作用の機序としてカルシウム・ホメオスタシスの乱れに対する正常化作用が存在することを強く示唆するものである。
|