実験動物(ラット)における睡眠・覚醒状態人工調節法の確立

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03557015
• 研究機関: (財)大阪バイオサイエンス研究所
• 研究代表者: 松村 人志 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (50173886)
• 研究分担者: SRI Kantha S 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 ; 大坂 寿雅 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (30152101) ; 早石 修 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
• キーワード: プロスタグランジンD_2 / プロスタグランジンD合成酵素 / プロスタグランジンE_2 / リポキシン / ロイコトリエン / セレン / セロトニン / マイクロダイアリシス

研究概要

1.無拘束ラットにおいて、脳波、筋電活動、脳温などを記録しつつ、同時に脳内の数箇所の部位において、薬液の投与やマイクロダイアリシス法を用いたサンプリングが行なえる特殊な実験装置を用いることにより、プロスタグランジン(PG)D_2を種々の方法で無拘束ラットの脳内に投与し、その睡眠促進作用について検討した。PGD_2をマイクロダイアリシスプロープにより脳内の種々の部位に両側性に持続投与する場合、吻側前脳基底部への投与で、顕著に睡眠が促進されることが多いが、明確でないことも多い。ところが、PGD_2を同部位の脳底のクモ膜下腔に持続注入すると、より顕著な睡眠促進作用が再現性良く得られることが最近明らかになってきた。この結果により、本研究でめざしていた、実験動物の睡眠状態の人工的調節が可能である。
2.PGD合成酵素の活性阻害剤である無機セレン化合物の第三脳室内持続投与により、睡眠がほぼ完全に抑制されることも既に明らかにしている。ラット脳内におけるPGD合成酵素の産生部位および存在部位が、脈絡叢、グリア細胞、軟膜であることが、in situ hybridization法と免疫組織化学法により最近明らかになった。上記のクモ膜下腔への無機セレン化合物の持続投与を現在検討中である。
3.睡眠の変化は、リポキシンやロイコトリエンの投与でも見られるものの、その効果はさほど顕著でない。セロトニン合成阻害剤であるパラクロロフェニールアラニンのラット腹腔内投与でも不眠が引き起こされるが、上記セレンほど顕著でない。セロトニンそのものの脳室内持続注入は一過性に覚醒を引き起こすが、その作用も比較的弱い。

研究成果

• [文献書誌] Matsumura,H.: "Inhibition of sleep in rats by inorganic selenium compounds,inhibitors of prostaglandin D synthase." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 88. 9046-9050 (1991)
• [文献書誌] Hayaishi,O.: "Molecular mechanisms of sleep-wake regulation:roles of prostaglandins D_2 and E_2." FASEB(Federation of American Societies for Experimental Biology)Journal. 5. 2575-2581 (1991)
• [文献書誌] 松村 人志: "睡眠調節とプロスタグランジン(PG)D_2,PGE_2." 日本臨床. 50. 195-201 (1992)
• [文献書誌] Takahata,R.: "Intravenous administration of inorganic selenium compounds,inhibitors of prostaglandin D synthase,inhibits sleep in freely moving rats." Brain Res.623. 65-71 (1993)
• [文献書誌] Kantha,S.S.: "Effects of prostaglandin D_2,Iipoxins and leukotrienes on sleep and brain temperature of rats."
• [文献書誌] Prostaglandins Leukotrienes and Essential Fatty Acids. (in press).
• [文献書誌] Matsumura,H.: "Site of action for the sleep-promoting,effect of prostaglandin D_2:Examination in freely-behaving rats by bilateral administration using microdialysis techenique." Jpn.J.Psychiatr.Neurol.(Proceeding). (in press).