研究概要 |
PAF(血小板活性因子)は免疫・アレルギー反応の重要なメディエーターの一つである。ヒト白血球,モルモット肺より得たPAF受容体クローンを用いて,以下の知見を得た。 1.PAF受容体遺伝子構造の解析 ヒト白血球cDNAをプローブとして,ヒト胎盤ゲノムライブラリーをスクリーニングした結果,PAF受容体遺伝子は三つのエクソン(エクソン1,2,3)より構成され,いずれも一番染色体に存在することが明かとなった。白血球型はエキソン1とエキソン3,心臓型はエキソン2と3が,それぞれスプライスされて生成されたものであり、異ったプロモーターに支配されることが明かとなった。 2.PAFによる情報伝達のメカニズム 免疫調節物質を開発する目的で、PAF受容体を大量発現させたCHO細胞を樹立し、受容体とその下流のシグナル伝達を解析した。PAF受容体刺激は、ホスホリパーゼC,ホスホリパーゼA2及びMAPキナーゼの活性化を促し、またアデニル酸シクラーゼの阻害をおこすことが明かとなった。一つの受容体がおそらくは異なるGタンパクを介して、各種のエフェクターにシグナルを送ると考えられる。 3.PAF受容体へのLPSの刺激 クローン化したPAF受容体を発現させたCHO細胞に細菌性のエンドトキシン(LPS)を与えると細胞内カルシウムの増加が認められた。またヒト血小板でもLPSはカルシウム増加と凝集をひきおこした。この二つの細胞の反応はPAF受容体拮抗薬で阻害された。エンドトキシンショックの病態の少なくとも一部はPAF受容体の直接活性化と考えられた。以上の知見を基に種々の抗アレルギー剤及び免疫活性化剤のスクリーニングシステムを開発した。
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