研究分担者 |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70114494)
檀原 宏文 北里研究所, 部長 (40114558)
成内 秀雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10012741)
嶋田 裕之 東京医科大学, 病理, 教授 (60113487)
高阪 精夫 国立予防衛生研究所, つくば霊長類センター, 室長 (80072924)
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研究概要 |
吉川代表と笹川班員による赤痢菌の病原性に関する分子遺伝学的研究を基礎にして,弱毒生菌ワクチンの作出を試み,その有効性と安全性をサルを用いて検定し,病理学的,免疫学的に確認するため本研究を企図した。フレキシナ-赤痢菌親株の細胞侵入性プラスミド上にある細胞間拡散に関わるvirG遺伝子にトランスポソンTn10を挿入して不活化した後,テトラサイクリン感受性菌を選択することによりvirG遺伝子の欠失した薬剤感受性菌を分離した。更に染色体上のチミン合成遺伝子を同じ方法で不活化した二重欠失変異株をワクチン候補株としてえた。分子遺伝学的並びに細胞生物学的手技により本株は一次細胞侵入性は保持しているが二次細胞侵入性を欠く予想通りのワクチン候補株であることを確認した。他方,このワクチン株の有効試験に用いる親株のカニクイザルに対するビルレンスを胃内投与法で検討した。その結果,親株はサルに対してビルレンスが十分に強く,今後の有効試験におけるチャレンジ株として有用であることが判った。本年3月からワクチン株の安全試験と有効試験に着手する予定である。上述親株による胃内投与法に際して死亡したサルと生残後死亡させたサルのそれぞれについて細菌学的検査,臨床症状観察,病理学的検査,免疫学的検査を行った。その結果は目下集計中であるが赤痢に関する典型的な所見がえられた他,多くの興味ある知見がえられた。病理的には発症例で臨床的治癒後も剥離性腸炎が遷延し粘膜固有層にリンパ球や形質細胞の集合がみられ,非発症例でも免疫芽細胞様の細胞が出現したこと,顕著な感染巣を有する大腸では好酸球が目だち,マクロファ-ジの出現と血管内皮細胞の腫大を伴なっていたことである。これらの所見は今後ワクチン投与実験における有効性を形態学的並びに免疫病理学的に判定する上で重要な示唆を与えるものと考えられた。
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