研究課題/領域番号 |
03557022
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
細菌学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 昌之介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80012714)
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研究分担者 |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70114494)
檀原 宏文 北里大学, 薬学部, 教授 (40114558)
成内 秀雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10012741)
嶋田 裕之 東京医科大学, 教授 (60113487)
高阪 精夫 予研, つくば霊長類センター, 室長 (80072924)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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キーワード | 赤痢菌 / 病原性 / ビルレンス / 組換えDNA実験 / 細胞侵入性 / ワクチン / 分子遺伝学 |
研究概要 |
B群赤痢菌の病理発生に関する分子遺伝学的研究成果に基づき、経口弱毒生菌ワクチンを作成した。それはvirGとthyA遺伝子の重複変異株である。本株の安全性と有効性をカニクイザルとモルモットを用いて検討した。ワクチン株の湿菌100mgをサル胃内に投与後1日ではまだ消化管に生菌が検出されるが、その後漸次減少し、4日以上生存することはなかった。ワクチン株の湿菌100mgを1週間間隔で3回胃内投与した場合、20匹中8匹に軽い様下痢が起こった以外には副作用はなかった。ワクチン株3回投与後28日に強毒株湿菌量50mgの強毒株を胃内投与すると対照群では15匹中10匹(67%)、ワクチン群では15匹中7匹(47%)が発症し、粘血下痢を起こした。3日以内に死亡したのはそれぞれ15匹中6匹(40%)、2匹(13%)であり、発症ザルの致命率はそれぞれ60%、29%であった。強毒株菌量を湿菌20mgにすると対照群5匹中4匹(80%)が発症し、死亡したのに対し、ワクチン群では5匹中1匹(20%)が発症し、3日以内死亡例は0であった。ワクチン投与後強毒株に耐過したサルでは大腸粘膜の組織構造はよく保持され、杯細胞の著名な粘液貯溜と分泌のこう進、形質細胞の機能促進が認められた。ワクチン非投与で強毒株投与後死亡したサルでは粘膜上皮の著明な欠損や、組織全体の変性、融解が強く、出血性偽膜性大腸炎が認められた。免疫学的にはワクチンの抗原性は防御抗体産生を引き起こすに十分な能力を保持していた。しかし、ELISA用抗原として全菌体を用いたため、ワクチン投与群のうち、非発症例、発症後回復例、発症後死亡例は何れも強毒菌投与前にlgAとlgBを産生し、その抗体価に差を認めなかった。モルモットを用いた方法によれば対照群で全例陽性になる条件下で、ワクチン群は全例陰性(有効)であった。以上を総括し、本ワクチンは、まだ改良の余地は大であるが、ほぼ完全かつ有効であると結論した。
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