研究課題
腸管感染症は集団食中毒ばかりでなく、散発例としても相当数の患者が存在する。なかには腸管出血性大腸菌や腸炎ビブリオ感染の場合のように、致死的感染もある。これらの感染症の診断と治療に際して、現在隘路となっているのは、原因菌の同定に時間を要するという点である。検査材料を培養し原因菌を分離し、分離菌の生化学的性状を調べる現在の同定法では、最低でも20〜30時間、長い場合は72時間以上が必要である。本研究は、先にわれわれが発表した高感度ビ-ズELISA法を腸管感染症菌の迅速同定に応用し、現場で利用できる検査用キットの開発を目的としたものである。まず、コレラ毒素の検出によるコレラ菌同定用キットについて、検査の最適条件を決定した。このキットをカルカッタのインド国立コレラおよび腸管感染症研究所において試用した。その結果、コレラ患者下痢便中のコレラ毒素のビ-ズELISAキットによる検出率は、従来のコレラ菌同定法およびコレラ遺伝子検出のためのPCR法に劣らぬことを明らかにした。腸炎ビブリオの耐熱性溶血毒の検出用キットについて、検出の最適条件を決定し、キット化に成功した。腸管出血性大腸菌が産生するVero毒素について、VT1とVT2の検出用ビ-ズELISA系を確立した。また、全菌抗原を対象としたビ-ズELISA系として、カンピロバクタ-・ジェジュニ検出用キットの試作品が完成し、現在カルカッタのインド国立コレラおよび腸管感染症研究所において、患者便を用いた実験が進行中である。
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