研究概要 |
パルボウイルスB19は、現時点においても、実験室的にウイルスの増殖が困難で、診断用抗原は遺伝子工学的に作製が試みられ、製品の試作、比較検討が行われている。本研究ではウイルス粒子の増殖を、赤芽球系継代細胞;K562,KU-812-F,RO10,JK-1とヒト末梢血および臍帯血から得た単核細胞で試みた。その中では臍帯血から得た単核細胞が、骨髄単核細胞の培養による量は超えないが、B19ウイルス産生に最も適していた。大量のウイルス粒子の収穫は容易でないとしても、倫理的に問題なく入手可能な臍帯血細胞は、B19ウイルス産生の一つの手段として利用できる。ウイルス抗原蛋白の作製を、遺伝子工学的手法と合成ペプチドの面から検討した。遺伝子組み換えにより、EcoR1で両端を切断した、ほぼ全長に近いゲノムDNAから、大腸菌で可能な限り長いウイルス蛋白の作製を試みたが、必要な量を産生させることが困難であった。合成ペプチド作製は信越化学工業株式会社研究開発部に依頼した。VP2全領域とVP1の重点的な領域から、15個のアミノ酸残基からなるペプチドの抗原性を調べ、16〜25残基の人の抗体に強く反応する7種の合成ペプチドを選択した。抗体反応性の立ち上がり、ピーク、持続性、特異性を相互に比較した結果、相互に近似するものを含めて、VP1領域から2種類、VP2領域から、3種類の新しい特異抗原ペプチドが準備できた。この免疫うさぎ血清(抗体)は、ELISAで測定されるよりも高い濃度(約100倍)ではあるが、ヒトの赤芽球系前駆細胞(CFU-E)において、B19ウイルスの中和能を同等に示した。ELISA間接法で、組み換え部分蛋白を抗原としたキットの反応性と比較すると、カットオフ値が低く、より精細な反応性を認めた。基礎的な抗原エピトープの解析とともに、診断用抗原の作製に新しい成果を得た。
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