研究概要 |
種々の身体的・心理的ストレスによって,メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され,肝・血液・尿中のメタロチオネイン量が増加することが知られてきた。 本研究は,このストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し,ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち,遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として,モノクロナル抗体を調製し,それを用いて,ストレス状態の際の尿・血中のメタロチオネイン量を測定し,ヒトのストレスを他覚的に評価する方法を確立する。 当該年度の実績は次の如くである。 1.ヒト・メタロチオネイン遺伝子の実現 メタロチオネインの遺伝子を全く持たない大腸菌に,ヒト・メタロチオネインIIの遺伝子を導入し,発現させることに成功した。 2.ヒト・メタロチオネインIIの大量精製 1.で得られた大腸菌を大量培養し,その菌体破砕液を出発材料として,ゲル濾過,高速液体クロマトグラフィ-等により,ヒト・メタロチオネインIIを大量に精製した。 3.ヒト・メタロチオネインIIのモノクロナル免疫抗体の調製 2.で得られたヒト・メタロチオネインIIを抗原として,マウスに注射し,抗体をつくらせた。ヒト・メタロチオネイン抗体を産生しているマウス脾臓由来のB細胞と,マウス・ミエロ-マ細胞を融合させ,抗体を産生するハイブリド-マのクロ-ニングを行った。これらの実験に,本研究費で購入したELISA法装置が大変役に立っている。今後ハイブリオド-マの培養上清より,また同細胞をマウス腹腔内に移植し,その腹水より抗体を調節する予定である。
|