研究分担者 |
土井 健史 大阪大学, 薬学部, 助教授 (00211409)
永野 洋幸 中外製薬(株), 研究所, 主席研究員
貞広 隆造 中外製薬(株), 研究開発企画部, 部長
長野 豊 京都大学, 医学部老年科, 助手 (80228048)
北 徹 京都大学, 医学部老年科, 教授 (60161460)
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研究概要 |
わが国における成人死亡原因の最大の要因の1つである動脈硬化症の抜本的予防,治療法の開発を目指し,本研究はその決定的段階であるコレステロールが血管壁に沈着し泡沫細胞を形成する機構の分子レベルでの解明と,その治療法の開発を集学的に進めた。第一に,コレステロールが血管壁のマクロファージヘスカベンジャー受容体を介してとりこまれる分子機構を明かにし,第二に,LDLの変性が脂質ラジカルを介する一連の過程で進行すいること,第三にLDLの変性抑制剤の作用機構の検討をすすめ,動脈硬化の新しい治療法の基礎をつくる成果をあげた。 (1)マクロファージのスカベンジャー受容体cDNAを4種の動物でまた染色体遺伝子をヒトおよびマウスでクローニングしその全構造をきめた,スカベンジャー受容体の6つのドメインの細胞生物学,および蛋白質工学による解析からアセチルLDL,酸化LDLの受容体との結合の分子機構を解明した。またスカベンジャー受容体遺伝子の全構造を決定し,そのプロモーター構造を明かにし,3種の遺伝的多型性を発見した。 (2)LDLの酸化は,ラジカルの産生方法に依存して進展するが,コレステロールエステルのラジカルの連鎖反応からアポBの変性がすすむとスカベンジャー受容体を介して泡沫細胞形成をひきおこすと共にマクロファージの状態を変化させる,LDLのみならずHDLも酸化され動脈壁からのコレステロールひきぬきの能力を失うことがわかった。 (3)LDLの変性抑制剤として,従来より知られるプロブコール,ビタミンEなどと,新規に開発されたLDL特異抗酸化剤の比較検討をすすめ,動脈硬化進展抑制のためには,第一にLDLに親和性の高いこと,第二にLDLのcoreの脂質の酸化を防ぐこと,第三にマクロファージからのコレステロールの逆転送を促進すること,をみたす薬物が有効であることがわかった。
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