研究概要 |
細胞障害性T細胞はウイルス感染細胞の排除に大きな役割を果たしているが,同時に組織障害も引き起こす.C型肝炎ウイルス感染においては,C型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞によるC型肝炎ウイルス感染肝細胞の排除が,持続的な肝障害を引き起こすものと考えられ,肝障害を抑制する手段の一つとして,C型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞が感染肝細胞に提示されたC型肝炎ウイルス抗原を認識するT細胞受容体の抗原認識部位に対する抗体を作製し,これによりC型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞の細胞障害性をブロックする方法が考えられる.私達は,慢性C型肝炎患者末梢血リンパ球より樹立したC型肝炎患者肝細胞を特異的に障害する細胞障害性T細胞株(TA-NB-2)のmRNAよりcDNAライブラリーを作製し,TA-NB-2細胞のT細胞受容体のα鎖,β鎖をコードする遺伝子のcDNAクローニングを行った.その結果少なくとも3種類の異なったβ鎖のcDNAがクローニングされ,TA-NB-2細胞は均一の細胞集団ではないことが判明した.従って,TA-NB-2細胞のT細胞受容体のα鎖,β鎖の可変領域をコードするcDNAの断片を発現ベクターに組み込んで大腸菌に蛋白を発現させることは一時的に中断している.並行して進めていた慢性C型肝炎患者末梢血リンパ球からの新たなC型肝炎ウイルスコア抗原特異的細胞障害性T細胞株の樹立に関しては,慢性C型肝炎患者末梢血リンパ球をC型肝炎ウイルスコア抗原全長(191アミノ酸)をカバーし,10アミノ酸づつオーバーラップする20アミノ酸の合成ペプチド(NP1〜NP18)の混合物で刺激することにより誘導したT細胞を限界希釈法によりクローニングすることにより,最近HLA B44拘束性のC型肝炎ウイルスコア抗原特異的細胞障害性細胞株の樹立に成功し,現在この細胞の解析を進めている.
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