研究概要 |
<目的> 遺伝性ムコ多糖代謝異常症を乳児期に早期診断するために、マススクリーニング法を開発し、全国レベルでのマススクリーニングシステムの基盤を完成し、本症の予防治療に寄与することを目的とする。 <平成5年度研究成果> 1.DMB法でのスクリーニング法の精度管理 DMB法阻害物質:前年度までの研究で明らかになった紙おむつ中の凝固剤以外に、尿に混入する可能性の高いヘモグロビン、ビリルビン、ビタミンC、脂質などにつきDMBとの反応性を検討したところ、ヘモグロビン、脂質により測定波長520nmで妨害が認められた。しかし前年度改良したサンプルブランク値を補正する定量法を導入することで影響は解消できた。 2.検体採取法 現在尿を用いたマススクリーニング法では、濾紙尿と原尿の両方が使用されているので、本法における尿採取法の是非を検討した。ムコ多糖標準液(CS,DS,HS,KS)を濾紙に浸潤させ抽出したものと原液を比較すると、n=36、r=0.932と高い相関を示した。さらに尿抽出液と原尿を比較するとn=58、r=0.581と有意の相関性は認められた。したがって抽出方法をさらに改良することにより、本法は採尿方法を問わないことが明らかとなった。 3.岐阜県でのパイロットスタディ 6か月児原尿11925検体についてムコ多糖/クレアチニン(mg/g)値を測定し、平均値209、標準偏差94より、カットオフ値をMean+2SD(400)と設定した。続いて岐阜県の6か月児尿6178例につきパイロットスタディを施行した。要再検例は162例(2.6%)であり、その内の130例(回収80%)につき二次スクリーニングをおこなったところ、陽性は0例であった。偽陽性の原因は低クレアチニン尿,紙おむつの混入が大きな割合を占めていた。
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