平成3年度に行った研究の反省として、アクリル酸重合体ナトリウム塩(SAP-I)だけでは塞栓物質として不十分な塞栓効果しか得られない可能性が指摘された。そこで本年度の研究では、新たに高吸水性ポリマーの一つであり、かつ、ゲル強度に優れるアクリル酸ソーダ・ビニールアルコール共重合体(SAP-II)を塞栓材料に選び追加の物性実験を行った。この実験によりこれら二つの塞栓材料を組み合わせることにより、通常の細動脈から血流の極めて早い動静脈奇形まで高吸水性ポリマーにより塞栓可能であることを確認した。また、懸濁液として油性造影剤のリピオドールしか用いることができなかったが、本年度の実験によりイオン性造影剤も用いることができることが明らかとなった。これにより一層臨床的有用性が高まった。これらの高吸水性ポリマーが塞栓物質として用いた場合、その粒子の大きさを調節できること、透視下で視認できること、毒性が低いこと、接着性がないことなどの特徴があり、従来の塞栓物質の問題点をほぼ解決できるものと期待される。上述の結果については、米国の放射線医学雑誌であるInvestigative Radiologyに投稿中であり、論文掲載の予定である。 現在、これらの材料について引き続き動物実験を行っている。実験の目的は、血管内長期停滞による血管壁の組織反応の検討である。急性の毒性については問題がないという結果を得ているが、長期の反応については未だ明確な結果を得ておらず、実験続行中である。また、肝組織に及ぼす影響について新たに実験を追加し、現在検討中である。現在までの動物実験の結果から、組織反応は軽微であり、十分な塞栓効果を有すること、永久塞栓物質であることが明らかとなり、臨床使用に向けて現在準備中である。
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