高吸水性ポリマーの一種であるアクリル酸重合体ナトリウム塩(SAP-I)およびアクリル酸ソーダ・ビニールアルコール共重合体(SAP-II)を血管塞栓物質として用いる研究を行った。これらの材料は油性造影剤やイオン性造影剤に懸濁させ血管内に入れ、血液と塞栓物質が触れて血液中の水分を吸収しその直径を増し塞栓物質として作用させるものである。これらの高吸水性ポリマーが塞栓物質として働くことを確認するために、動静脈奇形の実験モデルを作成し実験を行った。 この実験から、これら二つの塞栓材料を組み合わせることにより、通常の細動脈から血流の極めて早い動静脈奇形まで高吸水性ポリマーにより塞栓可能であることを確認した。これらの高吸水性ポリマーが塞栓物質として用いた場合、そ の粒子の大きさを調節できること、透視下で視認できること、毒性が低いこと、接着性がないことなどの特微があり、従来の塞栓物質の問題点をほぼ解決できるものと期待される。上述の結果は、日本医学放射線学会雑誌に掲載され、米国の放射線医学雑誌であるInvestive Radiologyに投稿中であり、論文掲載の予定である。 現在、これらの材料について引き続き動物実験を行っている。実験の目的は、血管内長期停滞による血管壁の組織反応の検討である。急性の毒性については問題がないという結果を得ているが、長期の血管周囲組織の反応については未だ明確な結果を得ておらず、実験続行中である。また、肝組織に及ぼす影響について新たに実験を追加し、現在検討中である。現在までの動物実験の結果から、組織反応は軽微であり、十分な塞栓効果を有し、さまざまな長所を有する血管塞栓物質であることが明らかとなり、臨床使用に向けて現在準備中である。
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