研究概要 |
近年急速に増加しつつある高齢障害者のQOLの向上のために,わが国で開発されたハイドロキシアパタイトを使用して皮膚端子とし,それを腸瘻や膀胱瘻などに応用することを研究目的とし,動物実験や臨床応用を試みた. 繰り返す肺炎のために鼻管カテーテル栄養が継続不能の患者を,ハイドロキシアパタイト皮膚端子付小腸瘻セットの植え込み手術の適応とし,3例に施行した.その結果,腸瘻栄養が可能であったが,端子に接続したシリコーンゴムチューブがハイドロキシアパタイト製フランジを牽引し,フランジが腹壁皮膚を圧迫し,皮膚の圧迫壊死を来たして,最長3カ月でそれを摘出した.なお,とくにデザインに改良すべき点がある. 寝たきり患者でフォーリ-カテーテルの留置によって尿道炎をおこし,それが穿孔した症例をハイドロキシアパタイト皮膚端子付膀胱瘻セットの植え込み手術の適応とした.本セットについては膀胱内留置用らせんカテーテルを開発した.仔ブタ2頭を使用して慢性動物実験を行ったところ,2,3カ月後に膀胱内に留置したシリコーンゴム製らせんカテーテルの内腔に結石用沈着物があり,内腔を閉塞しかかっていた.本システムについては,結石沈着を誘導しないような膀胱内留置カテーテルの材質が決定的要因である.それが解決されない限り,臨床応用は不可能である. ドラッグデリバリ用ハイドロキシアパタイト皮膚端子付腹腔留置用カテーテルは,マイクロポーラスな盲端のホローファイバを使用すれば実現可能で,現在臨床用カテーテルを製作中である.しかし,その臨床応用については,慎重な適応の選択が重要である.
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