研究概要 |
我々は本研究の目的に最適であるとの結論から標識化合物として^<11>C-メチオニンを選び,健常成人のボランティアおよび成人短腸症患者による臨床的研究,さらには各種条件下での雑種成犬腸管を用いた吸収能解析のための基礎的実験をすすめてきたが,その結果PETによる腸管吸収能評価法の基礎はほぼ完成したといえる。今年度に新たに進展したのは以下の諸点である。 1.アミノ酸吸収能-健常成人ボランティアおよび雑種成犬による検討の結果,^<11>C-メチオニンの比放射能を低下させることにより腸管吸収能の変化をより適切にPETを用いて評価しうるようになり臨床応用の可能性がきわめて高くなった。 2.糖質吸収能-アミノ酸吸収能評価は^<11>C-メチオニンを用いて殆ど問題なく行われるため,当初予定していた各種アミノ酸同士の比較にかわり今回初めて標識糖質である^<18>F-フルオロデオキシガラクトースを用いて腸管の糖質吸収能評価を試みた。その結果メチオニンよりも緩徐ながら明瞭な一定の吸収パターンがみとめられ,本化合物が充分に臨床応用可能であることが判明した。 3.脂肪吸収能-PETによる吸収能評価にはいまだ困難が多いがその前段階として^<123>I-BMIPPおよびそのエステル体の吸収動態評価を個別に試みており,脂肪の消化能と吸収能とを分離して解析する方法が開発されつつある。 なお,適当な症例にめぐまれず消化吸収障害患者での検討は十分とはいえないが,基礎的検討の大略は終了しており本法の有用性は明らかとなったものといえる。
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