研究概要 |
動脈硬化病変にたいする光力学的治療の臨床応用を目指し、平成3年度より光増感剤としてテトラサイクリン誘導体の塩酸ドキシサイクリン(DC),塩酸ロリテトラサイクリン(PRMTC),塩酸ミノサイクリン(MINO),硝酸ロリテトラサイクリン(PRMTC),塩酸オキシテトラサイクリン(OTC),を検討した。動脈硬化病変としては家兎動脈硬化モデルを用いて,動脈硬化巣への各種光増感剤の選択的集積性を検討したところ、DC>PRMTC>NPRMTC>OTC>MINOの順であり薬剤(抗生物質)として入手可能なテトラサイクリン誘導体のうち、DCが最も強い動脈硬化巣への選択的集積性を示した。また、そのDCの選択的集積性を用いた動脈硬化病変の蛍光診断についての検討では、動脈硬化病変の程度とその蛍光強度比がよく相関し,泡沫細胞の有無あるいは繊維化の程度をよく反映することが示され、動脈硬化病変の質的診断の可能性を示した。 一方、各種光増感剤のレーザー照射増強効果を動脈硬化病変の蒸散能で検討したところ、DC>PRMTC>OTC>NPRMTC>MINOの順に増強効果が強かった。次に、蒸散能の検討結果をもとに急性変化を示さない程度のレーザー照射により、各種薬剤を用いて家兎動脈硬化モデルに対して光力学的治療を施行し、その治療効果を経時的に検討したところ、DCにおいては全例で2ヶ月後には動脈硬化巣の退縮、消失を認めた。また、経時的な治療効果を組織学的にみると、その効果は照射1週間目に動脈硬化巣の細胞成分が減少することに始まり、緩徐な変化で動脈硬化巣が減じるものであることが示され、安全性の高い治療法と考えられた。現在、臨床応用を考え、経皮経管的な治療とすべくファイバー導光により光拡散物質を使用したバルーンカテーテル法による管腔内照射実験を行っており、この結果を考慮し臨床応用に着手する予定である。
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