研究概要 |
脊髄化学刺激実験として,仙髄クモ膜下腔にGABA(0.1-0.3mg),GABA-A作動薬muscimol(0.01-0.2mg),GABA-B作動薬baclofen(0.01-0.3mg)を投与したところ,膀胱容量が65%,142%,95%増加した。GABA-A拮抗薬picrotoxin(0.05-0.03mg)の投与で膀胱容量は28%減少し,mucimolの作用は抑制された。GABA-B拮抗薬phaclofenの投与は排尿機能に影響しなかったが,baclofenの作用を抑制した。仙髄にはGABA-Aと-B受容体があり,それらの興奮は排尿反射を抑制すること,内因性GABAは主にGABA-A受容体を介して排尿を抑制的に調節していることが分かった。 serotoninが排尿反射に及ぼす影響についても検討した。serotonin(0.03-0.06μM/kg)を静脈投与すると膀胱容量が減少した。0.1-0.8μMの投与では膀胱はさらに過活動的となり,外尿道括約筋の活動も増強した。この作用は5HT-2拮抗剤のketanserinで抑制された。これに対して,serotonin(2-6μM)をクモ膜下腔に投与すると,外尿道括約筋の活動は抑制され尿漏れが生じ,反射性排尿も抑制された。serotoninは末梢と脊髄では,排尿反射に対して異なった効果をもたらすことが分かった。 電気刺激実験としては,脊髄神経核刺激の予備実験としてイヌで仙骨神経を電気刺激したが,S1では外尿道括約筋収縮が,S2では膀胱収縮が顕著であった。臨床的には,二分脊椎患者の脊髄脂肪腫摘出術時に,脊髄前根の電気刺激を行ったところ,S1-S2の刺激では膀胱収縮は弱くて骨盤底筋群の収縮が強かったが,S3刺激では膀胱収縮の方が強かった。刺激に対する反応は,HRPを用いて検討した,膀胱と外尿道括約筋を支配する,それぞれの神経の脊髄内起始核の分布と相関していた。 携帯用電気刺激装置としては,まず臨床的に外尿道括約筋の機能的刺激を行える装置(約9×6×2.5cm大,10〜50Hz,0.2〜1.0msec duration,0〜50V,)を試作した。
|